今回はPS Vitaのタイプとモバイル通信について説明します。
PSVITAの推奨モデル
PSVITAの本体で3G/WiFiモデルとWiFiモデルのどちらを買うべきか、私は5,000円高くても、3G/WiFiモデルを買うべきと考えます。
理由は、GPSが付いているからです。まだ、nearやモンスターレーダーなどGPSを利用するアプリケーションは限られていますが、WiFiでの位置情報より断然正確です。
モバイルルーター経由で位置情報を得る場合、アンテナや基地局の切り替わるまで位置が更新されないので、どうしても大雑把になってしまいます。
WiFiタイプに今後発売されるかもしれないGPSモジュールを付けるという選択肢もあるかもしれませんが、最近の傾向として3GとGPSが同一のチップやモジュールで提供されていることもあり、単体のGPSが発売されることは望み薄です。
3G通信機能
携帯ゲーム機に通信機能が付くことは、いろいろな面で便利なのですが、PSVITAに限って言えば、3G通信機能は無用の長物です。以前SONYが携帯通信を、よく理解していないにも関わらず自社開発した結果、市場で大問題を起こしました。その後、通信部分は外部から購入し、手をつけないようにしているようです。PSVITAもQualcommの3G/GPS通信LSIを使っていますので、ミドルウェアもQualcommのものを、そのまま使用しているはずです。
一方、PSVITAはモバイル機器なので、こまめに電源管理を行い、バッテリー寿命を延ばしています。電源管理にはPSPと同系統の富士通製LSIが使われているとのことです。
PSVITAが発売された直後、ハングアップしたり、電源が切れなくなったりしたのは、3G/GPS通信LSIと電源管理LSIとの整合がとれていなかったためと考えられます。電源管理LSIは、PSPと同じ考えで、不要と判断した部分の電源を落とすのですが、通信LSIは電源の落ちた部分にアクセスし、応答が帰って来ないのでハングアップしてしまうのではないかと考えています。
通信LSIやミドルウェアには手を出せないので、SCEはスリープまでの最長時間を5分から10分に変更しました。この変更で、電源管理LSIと通信モジュールが競合してハングアップする確率が指数級数的に減ったはずです。すなわち、ハングアップすることが無くなったのではなく、確率が下がっただけで、根本解決は何もしていないということです。
実際に、3Gモジュールが原因であると言える、私が経験した実例があります。
私はPSVITAを購入直後、最初に電源を入れる前にSIMを抜いてしまい、3G契約が始まらないようにして使っていました。世間ではPSVITAの障害を耳にするのですが、私のPSVITAは全く障害が発生しませんでした。
2月になり、光ポータブルを導入するため、128Kbpsという低速な回線の使い心地を調べるため、PSVITAにSIMを挿入して3G契約を開始しました。その直後から、PSVITAの障害が頻発しました。スリープ状態にしておくとハングアップしており、電源ボタンを押しても復帰しないことも頻繁にありました。
更に、3Gの障害はGPSまで巻き込むことがありました。3G通信を有効にして、空の見える開けたところで何分待ってもGPSが現在位置を取得しないため、いろいろ調べているうちに3Gも通信出来なくなり、しまいには電源が切れなくなりました。30秒の電源ボタン長押しで強制的に電源を切り、立ち上げなおすと3GもGPSも使えるようになりました。
ソニーモバイルコミュニケーションズ(旧ソニーエリクソン)のように携帯電話を理解している会社が全てを作っていれば問題は無かったのでしょうが、部品をかき集めてPSVITAを組み上げただけのSCEには、3Gの障害を完全に無くすことは今後とも出来ないと思われます。
3G/WiFiモデルは、最初に電源を入れる前に、まず、SIMを抜く
PSVITAの3G/WiFiモデルを購入したら電源を入れる前に、まず、SIMを抜きましょう。箱に梱包されたどれかの紙に3G契約の説明が書いてあるからということなのでしょうが、SIMが挿入された状態でPSVITAの電源を入れると、勝手に3G通信を初めて3Gプリペイド契約を開始してしまいます。この作業中、一度もユーザーには問い合わせの画面は表示されません。
そして、その日から、「プリペイドデータプラン100h」なら194日後、「プリペイドデータプラン20h」なら44日後までに契約を更新しないと、解約となります。
最初に電源を入れる前に、SIMを抜いておけば3Gプリペイド契約が始まりませんので、自分の好きな時にSIMを挿入して3Gプリペイド契約を開始できます。
プリペイドデータプランの解約
上記のように勝手に契約が開始されるため、利用者は3G契約期間である44日または194日を、どの期間に設定するかを考える余裕もなく電源を入れただけで3G契約が開始されてしまいます。このような契約の仕方は反感を買う可能性があり、解約へとつながるかもしれません。また、現状では、契約を更新するよりMVNOやWiMAX、EMOBILEを使った方が安価で通信速度が速いプランを契約出来ます。
結果、こちらの記事にあるように2012年6月だけで、プリペイド契約は9万8千件の解約となりました。
3G/WiFiモデルの販売促進戦略とソフト開発
こちらの記事では、2012年6月の株主総会で、山田前社長が、「Vitaでは、何台売らなくてはならないという制約がない。」と言っていますが、この言い方は、PSVITAを売る台数は自分たちが決めているともとれます。ファミ通によるとPSVITAの販売台数は、2012/6/24までの累計が約76万台、PSVITAの初回限定版が50万台、3G/WiFiモデルよりWiFiモデルの方が売れているとのことから、初回限定版はまだ10万台以上売れ残っていることになります。
こちらの記事によると、iPhoneを売らないDoCoMoは純増数ではAUやSoftBankに大きく水をあけられ、MNPでも転出超過となっています。PSVITAにプリペイド契約を付けることで新規契約増加を考えたのでしょう。
しかし、思っていたほど売れなかった。ならば通信を使うゲームを増やし、通信環境が必須であることを消費者にアピールしなければなりません。
そのために企画されたと思われる「サムライ&ドラゴンズ」や「モンスターレーダー」など通信が必要なゲームが宣伝され、通信環境必須の「シェルノサージュ」にも白羽の矢が立ったのでしょう。そうなるとゲームが完成していなくても、発売を延期することなど許されません。「シェルノサージュ」は調整が不十分なまま、当初の予定通り、2012/4/26に発売となり、現時点でも続いている各種障害の原因を作ってしまったのでしょう。
更に、6月の9万8千件の解約が見えていたためか、プリペイドプランの契約者を繋ぎとめるための、「PlayStation Vita ”楽しもう3G” プレゼント企画」というキャンペーンが始まりました。
バグの改修の終わっていない「シェルノサージュ」に、もまたもや白羽の矢が立ちます。「シェルノサージュ」開発側が混乱していたことは、
- キャンペーンの告示時点で、シェルノサージュの特典内容、応募期間が決まっていなかったこと
- 6月中旬と言っていた開発スケジュールの発表が6月末までずれ込んだこと
- 第2幕配信までにバグを収束させ、終了させるはずだった「感謝キャンペーン」を「続・感謝キャンペーン」として終了時期未定のまま続けることになったこと
などから、想像できます。
物には売るタイミングというものがありますから、ネットワークオペレーターのスケジュールに合わせて開発を完了できなかった「シェルノサージュ」開発側にも問題はあると思われます。「サムライ&ドラゴンズ」はベータテストを行ったわけですし、「シェルノサージュ」もネタバレにならないシャールに関するコミュニケーション部分のベータテストは出来たはずです。
ソフト開発現場の取ったと思われる対応
まだまだ続いている「シェルノサージュ」の各種障害ですが、Ver.1.05における障害は、今までとは少し傾向が違います。例えば、
- 服飾等のアイテムとレシピが一部を除いて消失している
これは、第2幕で追加されるフォーマルスーツ?や、開発スケジュールにあるDLCの「コスチューム&アクセサリー「リーベルドレス」」および、「PlayStation Vita ”楽しもう3G” プレゼント企画」の新コスチューム「カフェ・デ・コモ」の対応のために服飾アイテム関係のプログラムに修正を加えた時にバグを作りこんだのでしょう。
- 「スタッフへのメール」を開くと、数字の羅列が表示されてメッセージが入力できない
これは、「パッチVer.1.05配信内容」に記されている、「運営メールのフォルダ分類化」でメールシステムのプログラムに修正を加えた時にバグを作りこんでしまったのでしょう。
- 7/5のアップデート後にシャールのローディングが終わらない現象
これは、これまでのマイクロクエーサーのチャージボーナスの傾向から、また、シャールのアイテムがチャージボーナスとして加わるのでしょう。そのため、シャールのアイテムのプログラムに修正を加えた時にバグを作りこんでしまったのでしょう。
ここまでの障害の傾向を見ると、私はソフト外注を変えたか、基本部分の修正と分けて、改良や追加部分の作成で新規にソフト外注を雇ったのではないかと考えます。既存のプログラムの仕様を理解していない者が修正を行えば、プログラムにバグを作り込むのは当然です。
こう考えると、Ver.1.05+第2章という環境でしか動作しないパッチ(Ver.1.05以降)を作ってしまったことも納得出来ます。これ以上DLCの配信を遅らせないため、限定的な環境でしかテストしなかったということです。
本来、
- Ver.1.00
- Ver.1.01
- Ver.1.02
- Ver.1.03
- Ver.1.04
- Ver.1.05
と6つのバージョンが存在し、
- 初回限定プレゼントパック
- イオンTALKパックvol.1
- セカイパックvol.2
のそれぞれについて「インストールされている/いない」の状態がありますので、ユーザー毎の環境の問題を除けば、
- 6×2×2×2=48通り
と最低限48通りの環境での動作をチェックし保証しなければなりません。
しかし、環境を限定すれば、検証工数を削減できます。「Ver.1.05」と「セカイパックvol.2」を必須とすることで、「初回限定プレゼントパック」と「イオンTALKパックvol.1」の有無で4通りだけ検証すれば済みます。
PSVITAは、新しいファームがリリースされるとアップデートするまでPlayStation Storeにアクセス出来なくなります。同様に、「シェルノサージュ」でも、このモジュールがインストールされていないと起動できないという仕組みを作れば今回の障害は防げたはずです。
Ver.1.05の出来は非常に悪いです。これが、現場の疲れとか一過性のものならともかく、見つかっているだけで3か所、それも修正することでバグを作り込んでいることから、ソフト外注の質が悪いと言わざるを得ない状況です。未だ直らないC2エラーですが、Ver.1.05を作ったソフト外注が担当するなら直る見込みは無いでしょう。
このような単純な画面でも、Ver.1.06がリリースされたのに合わせてバージョン表記を変えたつもりが2か所あるバージョン表記の内1か所しか訂正されていません。
つづけてシェルノサージュ”デートスポット&コスチューム”プレゼント
こちらに公開されたの「つづけてシェルノサージュ”デートスポット&コスチューム”プレゼント」ですが、3Gプリペイドデータプランを必要としない人にとっては、プランの価格がアイテムの価格ということになります。
新デートスポット「プラネタリウム」は、このカフェテラスのようにイオンが座った状態でしょうから、背景の1枚絵と音声データで980円ということになります。
新コスチューム「カフェ・デ・コモ」は3Dの衣装データで、4,000円ということになります。DLCの「コスチューム&アクセサリ「リーベルドレス」」が300円ですから非常に高価なコスチュームということになります。
これらはPSVITAの3G/WiFiモデルを買った人の特権ですが、そんなことになるとは事前の告知も無く、WiFiモデルを買った人にとっては不公平と思われるかもしれません。「シェルノサージュ『Genomi-Line』生放送!第二幕!」でもWiFiモデルを買った人を救済したいようなことは言われていました。
しかし、キャンペーンのインタビュー記事「開発者に聞く「シェルノサージュ」の魅力、そしてPS Vitaの可能性」で、「3Gネットワーク機能があったからこそ、成立した企画」と土屋暁 氏が言わされているように、ネットワークオペレーターが解約数を減らす、または、契約数を増やすためのキャンペーンですから、少なくともキャンペーンが終わるまでは提供されないでしょう。
逆に、WiFiモデルの人も入手できるようになってしまったら、何のために、不必要なプリペイド契約を更新したのかと、今度は3G/WiFiモデルを買った人に不満が出るでしょう。
プリペイドデータプランの更新
プリペイドデータプランの更新は、「ネットワークオペレーター」の「契約更新」から行うことになります。
プリペイドデータプランは、ネットワークオペレーターには個人情報は登録されませんが、更新することで支払方法をこの2つから選択することになるので個人情報は更新した時点でネットワークオペレーターに流れることになります。
有料DLC配信開始
4万7千人が一度はシェルノサージュを起動したということになりますが、まだゲームを続けている人は、ランキングなどを見た感じでは半分もいないのではないかと思います。そして、いよいよ有料DLCである「コスチューム&アクセサリ「リーベルドレス」」の配信が始まります。
イオンは、こう言っていますが、どれだけ引き止められるか。
シェルノサージュは、ガスト、SCE、ネットワークオペレーター、それぞれの思惑が絡んだ作品ですが、不幸な事故(プログラマーの技術力不足という人災ですが)により、当初の思惑以上に開発側とユーザーとの対話が活発になっているような気がします。
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